「牡蠣の大量死」:「森は海の恋人」はポエムではない
- Mariko Miki- The Blue

- 11月22日
- 読了時間: 5分
広島の牡蠣大量死がニュースになっていますね😢

広島だけではなく瀬戸内海全域で牡蠣の死滅が報告されている、、、。
原因の推測
ニュースでは「海水温の上昇が原因と思われる」と一様に伝えられていますが「海水温が上昇すると、なぜ牡蠣が死ぬのか」の理由の説明や推測はほぼ見当たらない、、、
現時点では原因が断定できないので、思い当たることは海水温の上昇しかない。けれど、因果関係も断定できないため推測・憶測をニュースで報道したくない」ということなのかと思います。
それでも、探してみると原因の推測が書かれている記事もちらほら。
【高水温】
「水温が高いと牡蠣が何度も産卵して弱る」
「高温では通常と比べて呼吸や分解が進みやすく、プランクトン類が酸素を消費する量が増え、海中の酸素が不足する」
「高温ではエネルギー消費量が高まり、栄養をいつも以上に摂取できないと痩せる」(夏バテ状態)https://osakana.suisankai.or.jp/s-other/11938
【降雨量と塩分濃度の関係】
「降雨量が多いと塩分濃度が低くなり、降雨量が少ないと塩分濃度が高くなり、死なずとも成長しにくい状態が続く事で体力が落ち、死ぬ可能性が高まる」
(前出の「魚食普及推進センター」記事より)
【台風の少なさ】
台風が少なかったため、海水が混ざらず高温が続く
(前出の「魚食普及推進センター」記事より)
【二酸化炭素の増加による海洋酸性化】
この理由による海洋酸性化は地球規模で共通なので全世界で同様の事態になるはずですが、一部の地域でだけこの影響による漁業被害が出る理由は「季節的に上昇流が起こり、二酸化炭素を大量に含む低温の水が、深海部から浅瀬の海辺や海岸線に上がってくる」からだそう。
でも、今回の瀬戸内海で起こったことは、これが原因ではなさそう。
【海底の堆積物】
2019年に書かれた広島大学大学院 工学研究所の論文(土木学会論文集サイトより)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kaigan/75/2/75_I_1117/_pdf/-char/ja
2010年代の調査を元にまとめられているので今回の大量死と直接因果関係を結論づけることはできませんが、すでに10年ほど前から牡蠣の大量死は起こっていて、研究もされていて、現在推測されている水温についても考察されています。
論文なので私には理解がむずかしい部分も多いですが、最後の「5. おわりに(2)」に「過剰な有機泥の堆積はマガキ生息環境を圧迫させている」との一文があり、「有機泥」の原因として指摘されているのが「マガキの糞や擬糞起源」「養殖の過密」。
私は水産関係者でも海洋工学の専門家でも何でもない素人ですが、海の環境の悪化を「地球温暖化で海水温が高くなっているから」だけで結論づける意見を受け入れて「それじゃあ個人でできることはなさそう、、、」とあきらめたくないので、数年前から海藻増殖学者の新井章吾さんを何度か葉山や横須賀にお呼びしてワークショップや講演会を開催し、
「陸域の手入れをすることにより水循環を改善し、海底湧水量を増やすことで海中環境の改善に繋げることができるのではないか」
という何十年にも及んで国内外の海に毎日のように潜って海中の変化を肌で感じ、海藻の専門家視点で導き出した新井さんの推論について学んできました。
2023年7月に行なった新井章吾さんワークショップのダイジェスト動画
その中で新井さんが強調されていたこと。
「海底に泥が堆積すると下記のようなことが起こり、海の生物に大きな影響を与える」。
・海藻や珊瑚の種の着底阻害
・夏〜秋にヘドロ化し酸素不足で硫化水素が発生→周囲の貝類は数時間で死滅
今回の広島の牡蠣の大量死も海底に近いところの牡蠣の死滅が多いようなので、もともと陸地から流れてきている泥が堆積していて、そこにさらに牡蠣の糞などの有機物が溜まって硫化水素が発生した可能性があるのではないか、、、
・「陸→川→海」への泥の流出を軽減させる
・酸素を含む地下水が海底に湧く「海底湧水」量をを増やす
ために「山や陸地で雨水浸透を促進し、表土流失を軽減する手入れ作業をするべき」という新井さんのアドバイスを元に、「水の環つなぎ活動:chotto」という名前のボランティア活動を2年前から始め、地域の河川や池周辺で雨水浸透を良くしたり、斜面地の手入れをすることで泥が水域に流れ込むのを軽減する「しがら土留めづくり」作業をなど行なっています。
夏場の作業の際、池や川の泥が堆積して浅くなり、その上に堆積した落ち葉がヘドロ化して真っ黒になっている箇所を木の棒などで少しかき混ぜてみると、異臭が立ち上り、
「新井さんがおっしゃっていた硫化水素かも、、、 吸ったらヤバイ」
と息を止めて私は立ち去ることができるけど、
「これが流れ込む水に生きている生き物のみなさん、ごめんなさい、、、。落ち葉の流入の軽減や水循環を回復させるぞ」
と涙目で心に誓うしかない。
なんでも「気候変動」「温暖化」だけに結論づけて「それじゃあ自分なんかにできることはない」とあきらめるのではなく、「自分にも庭や畑、公園などでできることがある」ことをもっと多くの方に知って頂き、「陸から海中までの流域全体を、水循環の回復を通して再生する動きを広めたい」と下記のトークイベントも企画しています。
「森は海の恋人」というフレーズが単なる耳障りの良いポエムではなく、どのような仕組みで関係しているのかを、今回は海底湧水の学術研究で知られる福井県立大学教授の小路さんに逗子までお越しいただき、地下水や海底湧水視点で「陸ー海のつながり」を科学的・学術的をもとにして頂くお話は、きっとおもしろいはず。
「話を聞いて頭でわかって終わり」ではなく、自分ごととして腹落ちさせ、生活の中でできることを始めて頂ける機会になればと願っています。







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