top of page

「陸も海も生き物も人もひとつの生態系」であることを学んだ御蔵島へ

更新日:5月16日

1993年から2019年まで約30年間、毎夏訪れていた伊豆諸島の御蔵島

天候が安定していればイルカと泳ぐために来島する方々で賑わっているGWの今ごろになってしまいましたが、数ヶ月前に久しぶりに行って来ました。

(御蔵島で行っていた自然体験プログラムのことは下記ページにまとめています)


時を経て島もずいぶん賑やかになり、自分も歳を重ねて「これからは、まだ行ったことがない場所へ行きたい」という気持ちもあってここ7年ほどは御蔵島へ行っていなかったし、「イルカと泳ぐことは、もういいかな」という気持ちに変わりはないものの、ひとつだけ「やり残している」感を引きずっていたのが「御山縦走」


御蔵島で一番標高が高い御山は標高851mなので高山ではないのですが、なんせ全島崖だらけの島なので、ハイキング道は急坂が多い。


だいぶ昔に御山まで登って同じ道を戻るハイキング(というか苦行💧)はしたことがあったのですが、午後にはドルフィンスイムへ行くという無謀なスケジュールをこなしてしまい、島の方に、

「お前ら、朝御山行って午後イルカ行ったらしいな。バカだな」

と笑われ、若かったのに翌日はみんな膝がガクガクになって朝ごはんの時間になっても民宿の2階から階段を降りて来られないという事態に。


なので「いつか、御山へ登り、違うルートへ降りる縦走をやりたい」と思いながらも、ネイチャープログラムの参加者や家族・友人と一緒の時はドルフィンスイム優先で実現しないままになっていました。


が、体力は衰える一方なので先延ばしにすると実現できないまま老人ホームで後悔することになるかもしれず、「この冬に決行だ!」と密かに決意を固め、春の訪れの少し前に行ってきました。


夏でもいつでも年がら年中「海が荒れる、風が強い、潮が速い」などの理由で客船が着かないことが多い御蔵島なので、冬となればなおさら。

「予定通りに行って、予定通りに帰ることはほぼ不可能」はデフォルト。

ヘリは島民の方や仕事で来島される方の貴重なインフラで満席だったので、覚悟を決めて竹芝桟橋からなつかしい黄色い船に乗り込む。


「橘丸」航路の三宅・御蔵・八丈島、全て条件付きでの出航、、、
「橘丸」航路の三宅・御蔵・八丈島、全て条件付きでの出航、、、


三宅島までは冬の海にしては静かだったものの、三宅から御蔵へ向かうと波が高くなりドキドキでしたが、無事着岸

御蔵で降りた人は「仕事です」感のおじさん数人で、観光客は私1人。


相変わらずの断崖絶壁
相変わらずの断崖絶壁



【里の中】


御山縦走は翌日に予定しているので、まず、神社へ。

「真新しいコンクリの階段とかになってたらどうしよう、、、」

と心配しつつ行ってみると、変わらぬ石段。

丸い玉石の上に平らな石が乗せられており、安定悪そうなのに安定していて絶妙。いつごろ誰がやった仕事なんだろう。すごいなぁ。

やたらと「レガシー」とやらを残したがる政治家多くて迷惑だけど、こういうものこそレガシー。

「そこにずっと当たり前のようにある」状態が維持されているのは、賞賛も求めず、賞賛されることもなく、人知れず歴代の神主さんや島民の方々が微調整や手入れをされて来られているからこそ。



里の神社の本殿は30年近く前に建て替えられたけど、石段は変わらず
里の神社の本殿は30年近く前に建て替えられたけど、石段は変わらず


丸い玉石は島の浜のものだけど、大きな平な石はどこから運んだものなのだろう?

お年寄りも多いし、夏祭りの際には重いお神輿を担いでこの石段を登り降りするので、

「転んで怪我をする人が出たら危ないから、コンクリの階段にしよう」とか

「隙間をコンクリやセメントで固めよう」

としていないところが素晴らしい。


神主さんにも「この石段、コンクリやセメント詰めたりしないでくださいね!」と念押しでお願いしておきました。


一方、今回の最大の衝撃がこれ。


里のはずれの斜面に大規模な擁壁が造られています。

思わずムンクの叫び状態😱😱😱になってしまいましたが、平地がない島に住宅を増やすには崖地を削るしかなく、背後をこのようにするしかないのだと、、、、

「ここは固めて抑えたけど、そのせいで周囲が崩れた」という展開にならないことを祈る、、、🙏



「まあ、気を取り直して」と言わんばかりに出たダブルレインボー
「まあ、気を取り直して」と言わんばかりに出たダブルレインボー


夜は御蔵のニュースポット「cafe & bar:ハナレ」で長年お世話になっていた方と飲み会。

この「ハナレ」は、もともとイルカの調査でうっかり来島したところ、そのままずるずると観光案内所の職員となり😆、すっかり島民と化した小木万布さんが案内所を退職して始められた場所。


築100年ほどの平屋の古民家を素敵にリノベされています。

水洗トイレがメインだけど、コンポストトイレも併設されているのもナイス👍


玉石のアプローチも小木さんが自分で敷かれたとのこと
玉石のアプローチも小木さんが自分で敷かれたとのこと

私が最初に島に来た頃は、まだ人家のほとんどはこういう木造の平屋だったのが、1995年の大型台風直撃で木造の建物の被害が大きく、その後は鉄筋コンクリートの建物や新建材の家が多くなり里の風景も変わりました。

なので、こうして残っている木造古民家が大切に引き継がれるのは貴重。


「ハナレ」カフェスペースの入り口側
「ハナレ」カフェスペースの入り口側

真っ黒になっている古い柱や梁。縁側。

最初の2年、まだ民宿がなくて仲間たちとネイチャープログラムのための場所として借りていた古い平屋での生活を思い出します。

あの家には、絶対に「まっくろくろすけ」がいた。


厳選された美味しいコーヒーやビール、ワインなども頂けるのですが、翌日の大目的が控えているのでお手製「月桃茶」「黒もじ茶」などの養生系ドリンクと、ベジのチリビーンズやクッキーなど頂きましたが、すべておいしい! 

(小木さんが小麦グルテン不耐性ということで、スイーツ類は全てグルテンフリー)




うちの本棚と共通点多し
うちの本棚と共通点多し


「ハナレ」の手前半分は週に数日オープンのカフェ&バー、奥は1日1組限定の宿「ネドコ」

カフェスペースはブックカフェになっていて、良書がたくさん。

ボランティア活動を手伝ってくださっている「しおだまりん」さんの海洋マンガ「青の王国」も!


御蔵島にはイルカだけでなく、昆虫・植物・鳥などいろいろな調査に来られる研究者も多く、小木さんはご自身が研究者であることから長くこれらの研究者の窓口となられていたため、こちらの宿も研究で来られる方のためにつくられたとか(一般の観光客も泊まれますが、研究で来られる方は優先予約などあるようです)。


本棚には御蔵島の自然や歴史関係の本も多く、宿のマットレスはエアウィーブ、お風呂は青森のヒバで作ってもらった特注品、ミニキッチン付きで自炊も可能、ということで、私がもしいわゆる富裕層の人だったら、

「忙しい毎日を強制終了して、ここで読書三昧」

「ただ、ひたすら昼寝する」

という贅沢な目的でここに泊まりに来るかも。

あ、でも予定通りに来て予定通りに帰れる確率は低いので、ヘリチャーターできるレベルの財力が必要かもしれないですが、、、


⚫︎「ハナレ」「ネドコ」運営 miku-laboウェブサイト




【御山縦走】


山のガイドも小木さんにお願いしました。

御蔵島で山に行く場合、限られた箇所以外は認定ガイド同行でないと行かれません


細かい説明は省きますが、私が「あえて冬に、1人で来た理由」。

それは、

「いま自分がやっていること」

「これからもやっていきたいと思っていること」

の原点がここ御蔵島にあるから。


どこもかしこも防災と経済のために人工化され、世界自然遺産のコアゾーンですら入り口に何億もかけた鉄筋コンクリートのビジターセンターが造られる昨今、人の気配が少ない冬に、この島の緑と「水の循環」をじっくり体感したいと思ったから。


山の中を歩き始めると、聞こえるのは、自分たちの足音、風、鳥の声。

午前中と午後に1回ずつヘリの音。


「苔類・地衣類の研究者を案内すると、すぐ立ち止まってしまうので全然先に進まない」

と小木さんが苦笑されていた通り、苔類・地衣類に特別な興味を持っているわけではない私でさえ、

「うわ、なにこれ?」「か、かわいい、、、😍」

etc 萌え対象がありすぎる。




笹が群生しているところ、スダジイの巨木があるところ、柘植の群生地 etc、標高や日照条件などによって植生もいろいろだし、安い輸入材が入ってくる前は柘植や桑などが高級木材としてお江戸へ送られ「御蔵島は伊豆七島で一番の金持ちだった」と島の方がおっしゃるほど林業も盛んだったので植林されたところも多く、全てが原生林というわけではないけれど、何ヶ所か「奥山」として人が手を入れない、「草一本取ってはいけないとされる神域」などのゾーニングをしつつ、山が資源として使われて来た歴史があります。


それでも、

「黒潮が断崖絶壁にあたって雨を降らせ、土中に染み込み、海から巣に戻ってきたオオミズナギドリが海からの栄養を糞で落とし、落ち葉や枝と共に土や水の栄養になり、湧水、滝、地下水、そしてたぶん海底湧水として、島中〜島の周囲まで巡っている豊かな水の流れと循環が、ここではまだ生きている」

ことが感じられる。


ネイチャープログラムをやっていた時、

「御蔵の山に入ると元気になる気がする。他の場所でハイキングに行く時には感じられない何かがあるんだろうな」

と、いつも思っていたけれど、きっとそれは人口も観光客も少ないゆえの人の介入の少なさが、他の多くの場所のように防災や利便性のために「水と空気のめぐり」を断ち切る必要が少ないからなのかなと思う。



分岐点にある案内表示。フォントもカッコいい。
分岐点にある案内表示。フォントもカッコいい。

         


雨が多く湿度が高い島なので、こういう案内板を木で作ればすぐに朽ちることはわかっているのに「金属製ではなく木で作る」と決めた人は誰だったんだろう。

素晴らしいセンス、英断。ありがとう。


「海外」と言っても広いので世界中のことを知っているわけでは全然ないですが、私が行ったことがある国の国立公園やハイキングトレイルの看板、案内板は、ほとんどがこういう木製

目立たないし、ところどころ読めなくなっている箇所があったりもするので、利便性や耐久性を考えれば頑丈な金属製の方がお利口さんな選択なのでしょうが、自然の中で見る金属製の看板って、その硬さが目立って「目に痛い」というか、やっぱりその場に馴染まないものとして違和感を感じ、美しくない。

顔ハメ看板(パネル)に至っては、もう暴れたくなる衝動を感じるほどキライ(キッパリ)。


1年半ほど前にイタリアの島の小さな村のはずれにある古い巨樹がある場所に現地のイタリア人ネイチャーガイドさんに連れて行ってもらったのですが、そばに小さな木造の小屋と小さなウッドデッキがあり、夏はドリンクを買えるお店がオープンするとのことでしたが冬だったのでクローズしており、本当に静かで、大きな樹だけがどっしりと、ひっそりと、人が来ようが来まいが関係ない佇まいであるだけ。


私が、

「日本だったら、絶対ここに自動販売機が置かれる。

 日本人は時に親切すぎるから、こんな不便なところまで来て、周りにお店もなく喉が渇いたら困るだろうと自動販売機を置く。

 で、ペットボトルや缶が周りに散乱するお決まりの展開になる」

と言ったら、ガイドさん驚愕。



御山頂上に到着
御山頂上に到着

御山頂上は、「え、ここが頂上?」と思ってしまう達成感ない場所(笑)。


ま、そこが御蔵らしいというか、変に観光スポットにならず良いのかも。

その地味な場所で地べたに座ってお昼ごはん。

小木さんが塩おにぎりを作ってきて下さり、ミニバーナーでお湯を沸かして黒文字茶も淹れて下さいました。



お米は知り合いの方が無農薬で育てられたそうで、そんなお米を御蔵島の水で炊き、美味しいお塩で握って、海からのミネラルも上がってきそうな御山頂上で頂く。

ミシュラン星付きレストランでフォアグラだのキャビアだの頂くより、私にはこちらの方がずっとずっとご馳走です。

「認知症になっても、ここで食べたおにぎりが美味しかったことは覚えているだろう」

と思うほど、染み入る美味しさ。


ガイドして頂いた小木さん
ガイドして頂いた小木さん

なぜかわからないけれど、こういう景色がものすごく好き
なぜかわからないけれど、こういう景色がものすごく好き


山 〜 沢 〜 海 の一体感
山 〜 沢 〜 海 の一体感

              


御蔵ですら昨今は雨が少ないそうですが、沢には冷たい水
御蔵ですら昨今は雨が少ないそうですが、沢には冷たい水

苔の上に薮椿。世界が出来すぎていて足を踏み入れるのに躊躇する
苔の上に薮椿。世界が出来すぎていて足を踏み入れるのに躊躇する


このトレイルは違いますが、島のハイキング道の一部は「近自然工法」の技術者を呼んで、島の方々も一緒に汗を流して整備されたそう。


⚫︎環境省「登山道を直す 近自然工法の考え方と技法」


⚫︎林野庁「自然に溶け込む山の道づくり」



「自然体験をしてもらう機会を作ろう」

「自然や景色を観光資源として活用し、観光客を増やそう」

と、入る人の数が多くなれば、比例して自然環境へのダメージも大きくなり、そのダメージが負の連鎖を呼び「観光資源だったはずの自然環境や景観を失う」という展開になりがちなわけなので、行政や観光協会がこういうことを理解して、現実的に自分たちの手で取り組まれているのも素晴らしい。




【行きも帰りもスリリング】


「明日の船はたぶん大丈夫だろう」

と、ハイキングから無事に帰ってきた夕方の時点では思っていた。

ので、桟橋に夕陽を見に行ってイルカの群れも見て、夜は「ハナレ」のバー営業でワインなんか飲んじゃって余裕かましていたところ、寝る前に天気予報をチェックすると、おや? 昼頃から風が強くなる予報に、、、

イヤな予感、、、


「明日ダメでも明後日は大丈夫そうなら、延泊してもいいかな」

なんてさらに余裕をかまして翌々日の予報を見ると、漢字3文字。

「暴風雨」、、、💧

その後は数日「絶対、船来ないから」な予報、、、


冷や汗たら〜りで宿の方に「明日の朝の船で帰ります」とお伝えし、朝、三宅から来て八丈島へ向かう船に乗る。

八丈島で折り返して昼にまた御蔵へ戻って→三宅→東京へと向かうのですが、昼に風が上がって船が着かないと3〜4日は島に閉じ込められる展開が待っているけど、朝乗ってしまえば昼に御蔵を素通りしても東京へ戻れる。

結果、昼の船も着いたのですが、予報通りお昼前から風は強くなったもののお天気は良かったので、青い空と海と島々をずっと見ていられて飽きることなく約14時間のロングクルーズを堪能。


考えてみると長く毎年御蔵島に通っていながら、一度も「八丈流し」にあっていない。

(朝の船が三宅島から御蔵島に向かうも、着岸できずに素通りして八丈島へ向かうこと)


「昼の東京行きの船は危ないから、朝船に乗る」

と言うことも一度もしたことがない。


ので、今回初めて「朝日を浴びる御蔵島の裏側」を沖合から見る体験をした。

(ドルフィンスイムで御蔵の船で沿岸から島の裏側も見たことは何十回もあるけれど)




「神々しい」

と言う形容しかできない。


昔は島の反対側にも集落があったけれど、廃村になってからは人が行くことはあっても人の生活はない。


「人がいない自然は、神々しい」

ことを認めるのは、

人間として、生き物として悲しい。


鳥も虫も動物も、それぞれが他の生き物を食べたり、自然の一部を少し改変して巣を作ったりしているけれど、彼らがいても神々しさは失われない。

でも、ある種の生き物が大量発生したり、特定の植物だけが蔓延っている場所は、人がいなくても神々しさは感じられないので「バランスが取れているかどうか」ということなのか。


そんなメルヘンなきれいごと言ったところで、私も毎日ガソリン車に乗って排気ガス撒き散らしてるし、エアコンも使うし、プラスチック製品もスマホも使う。

御蔵島へ行くのだって、大量のガソリンを使う大型フェリーだし、大量のコンクリートでできた桟橋や港がなかったら行くことはできない。


こんなことをモヤモヤ考えること自体「お花畑」だとわかっているけれど、「小さな島」という「生態系の丸ごと感」を感じやすい場所、特に黒潮本流がぶちあたることによることと地形による雨の多さがつくり出す豊かな水の循環を、視覚的にも体感的にも感じることができるこの島は、これまでも、これからも私の価値観の根っこであり、この島の自然や人の暮らしから学んだことを「チャラい湘南」でどう生かして行かれるか、試行錯誤しながらやっていきたい。






コメント


The Blue Co., Ltd  
1-6-3-5 Akiya, Yokosuka City, Kanagawa Pref.
Japan  240-0105
​Tel: 81-46-845-6342   

​The Blue 株式会社
240-0105 神奈川県横須賀市秋谷1-6-3-5
​Tel: 046-845-6342     

 

  • The Blue Vimeo
bottom of page